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瀬戸内寂聴の〔場所〕を読んで

胸に響く一冊となる本です。ブログで存じ上げた画家の〔風の樹人〕様が良い本だとお知らせくださったので読み始めたのですが、思うと私はこれまで瀬戸内寂聴〔晴海〕の本はあまり読んでいなかったのではと思います。それでも彼女がどのような半生を送ったかはなんとなく知っていた気がしていました。〔場所〕の内容は、彼女が出家する以前のドラマチックな生き様を思い出の場所に沿って回想しています。

〔場所〕は平成16年に発行されていますから、ごく最近の著書になるのですが、文章の合間から立ち昇ってくるような情念は、出家の身でありながら彼女は生涯類まれな文才の小説家なのだ思い知らされます。少しだけ引用しますと

〔自分の性格の中には人一倍の律儀さと阿呆勤勉と同じくらい、抜きがたい無頼の精神が同居していた。いざと言う瀬戸際に立つと、必ず無頼の精神が他の習性を押しのけ、一気に破壊的な衝動を採ってしまう。それはもう止むに止まれない強い力で私のいささかの理性や計算は何の役にもたちはしない。〕

人間が、女が、自分に正直に、あらん限りの力を持って生きるというのはこういうことなのだという感動を覚えた一冊でした。

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コメント

瀬戸内さんという人はエネルギッシュな方ですね。私も小説は読んでいませんが、社会的に活躍されているのは知っています。
昔、出家された時、どうしてもテレビ番組に出演してもらおうと電話で口説いたのですが、出家したばかりというので丁寧に断られました。あの時は確か京都か大阪か関西地方におられました。今東光に師事していましたからね。
何年か前にテレビで彼女の「法話」を聞いたことがあります。上の文章を読むと“天衣無縫”の人という感じがしますね。未だにご健在なのでしょう。

投稿: 矢嶋武弘 | 2010年6月 9日 (水) 11時06分

矢嶋様
昔文芸雑誌に今東光さんやその時代の作家達とグラビアによく載っていて、瀬戸内晴海の女々した姿はいかにも男女ごとに奔放そうな印象を持ったものです。当時宗教性を意識した遠藤周作を好んで読んでいた私はあまり彼女の本は読みませんでしたね。ちょっと残念です^^
そうでしたか。さすがに出家してすぐのテレビ出演は控えたんですね。矢嶋さんにとってそれは惜しい事でした。

寂聴の説法はどこでも大人気だそうですが、生身の人間を身を持って体験した人であればこそとうなずけます。嘘がない魅力ではないでしょうか。。。

投稿: おキヨ | 2010年6月 9日 (水) 12時01分

矢島武弘様
おキヨ様
場所についての意見交換、面白い交歓ですね。
私も沢山は読んでいませんが、横尾忠則さんとの親交が厚いこともあって、3度以上お出会いしました。
中でも、小生の関わっています「西脇市岡之山美術館」の25周年記念講演と、レセプションにご参列をお願いしましたこと見合って、1対1での時間が、寸刻ずつありました。自在な生き方と、その文才。知識の広さ、深さに、何時もぎょっ天するところがありますし、感性の鋭さも他者を寄せ付けないほどの凄さがあるかたす。
「愛死」と言う、エイズをモチーフに、愛を物語にした小説もあります。  ストーリーを時間の前後を、交錯させながら、手紙を素材に使った、実に巧妙な手法の小説だったと記憶します。
その小説の挿絵を担当した横尾忠則さんの「挿絵」だけを天視した企画展も開催しました。
既に、その頃、横尾さんは、解説的な挿絵ではなく、自分の「死生感」、「愛感」を、存分にモノクロで描ききったことを思い起こしました。
彼女のエピソードは沢山ありますが、本人がオープンにされたことのみ、時間のあるときに書いて見たいなと思っているところです。

投稿: 来住しげ樹 | 2010年6月 9日 (水) 18時02分

風の樹人様
来住先生、素晴しい本を紹介いただきまして有難うございました。瀬戸内寂聴の〔源氏物語〕は3巻まで読みましたが10巻という長編に息切れしてしまい、途中で他の本に移っています。他に読みたい本が次々と出てきますので気が焦ります^_^;

テレビなどで垣間見る限り寂聴さんは出家前と変わってしまった感じは受けません。あれだけの知識を得る生き方をされてきたのでしょう、小説家という生まれついての天分がすべてを吸収したうえ解き放たれ我々を楽しませてくれます。
私は綺麗な所だけを切り取って生きてきた人より、自分の業とはいえ辛酸を舐めた上でそれを浄化した寂聴さんのような人間が本当だと思います。
今頃になって彼女のフアンになったようです〔苦笑〕
現在読みたい本を3冊持っていますが読み終わったらまた〔愛死〕を読みたいと思います。

来住先生の書棚を拝見して同じ書物を発見したときちょっと嬉しくなります♪

横尾忠則と瀬戸内寂聴のツーショット!凄いものがありますね。どのような会話になるのでしょう。。。

投稿: おキヨ | 2010年6月 9日 (水) 19時43分

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