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三浦哲郎の死

先日、我が郷里の芥川賞受賞作家、三浦哲郎が亡くなりました。作家の本は同郷の、しかも私の長兄と同級だったということを除いても、その過不足のない叙情と文体の清冽さに魅力を感じていた作家です。また私にとってなにより嬉しいのは、郷里の事が多く書かれていること。。。作品に登場する状景は、〔あの場所に違いない〕と思いながら読むのはいっそう楽しいし、懐かしい東北南部言葉がふんだんに使われているのも嬉しい事です。作品の中の南部言葉は若い頃私が恥ずかしく思っていた東北弁とたしかに同じ言葉なのに、何かゆったりと品さえ感じられるのは作家の文章力と郷里に対する思いなのでしょう。

〔でんせつ〕という短編に〔赤手コの話〕を見つけたときには思わず〔あった、あった、そういう怖い話〕と思ったものです。〔赤手コ〕の〔コ〕とは、東北地方で言葉の後につける慣わしです。トイレの中から赤い手が出てきて、お節介にも子供のトイレでの後始末を手伝うという、当時の子供だったら誰でも聞かされる話でした。何もない時代に親子のコミニュケーションとして東北にはこのような伝説が多く語られていたのです。

三浦哲郎の他界はなにか身近な人のことのようで、その無念さもひとしおです。

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コメント

おキヨさん
三浦哲郎さんが同郷の上、ご兄弟の同級生と言う関係。
あのピュアな、淡々とした叙情。 私などが、純文学と言う世界をジャンルとして意識し始めた頃でした。
でも、殆ど当時の小説は覚えていません。読後感を短編も含めて必ず目盛っていた時代でしたし、そのノートが、なんとも未熟な評を書いたものだと今も残っているそのノートの、青春時代を思い起こすのです。
三枝和子と言う作家が、私にとっても身近な作家でした。74歳と言う若さでなくなりましたが、真言宗の光明寺・花蔵院住職の文芸評論家森川某さんの奥さんでした。 山頂の花蔵院で、酒を酌み交わしながら、深夜まで語り合ったことがあります。
その後、「鬼どもの夜は深い」で泉鏡花賞を、その前に田村とし子賞を取った人で、じめじめした土壌のこの地方に馴染め切れないで、新宿住まいを半年毎にしていた作家です。
「花蔵院日記」と言うエッセイ集が殊のほかその気持ちを吐露していて、「鬼・・」の誕生の必然を思ったものでした。  その「鬼・・」は横尾さんが泉鏡花賞を受賞した際に所望されて彼に送ってしまっています。
一人の作家ごとに、いろんな思いをいろんなところで生んでいることに、そんな存在の一人、三浦哲郎さんを持っているオキヨさんに、共感を覚えるのです。

投稿: 風の樹人 | 2010年9月20日 (月) 08時55分

作家・三浦哲郎の名前はよく知っていますが、改めて振り返るとほとんど作品を読んでいなことに気づきました。
「忍ぶ川」くらいは目を通しているはずですが、栗原小巻さんが主演したモノクロ映画の記憶とともに、濃い霧の奥に閉じ込められています。
無作為のうちに素晴らしいものを知らないままに一生が終わるのが悔しいですね。
もっと時間が欲しい・・・
そう思いながら、けっこう時間を浪費しているわが身です。

投稿: 風花爺さん | 2010年9月20日 (月) 10時14分

風の樹人様

昭和30年代は実に香り高い純文学の作家達が煌めく時代でしたね。我が青春の作家達が徐々にこの世を去って淋しい限りです。でも作品は残されて、本は手軽に手に入ることができるのでこれはありがたいことです。
私もあれほど熱烈に読んだ本の内容などほとんど覚えていないのです。華々しくデビューを飾った三浦哲郎の〔偲ぶ川〕の内容さえ覚えていません^^あらすじぐらいは思い出すのですが、それすら他のものとごっちゃになっている危うさです。

三浦哲郎も郷里では決して幸福な時代ではなかっただったと知っていますが、その人生観が作家として深みや格調高さを培ったものと思うのです。
あまり幸せではなかった郷里に深い思いを抱いていることが私も齢を重ねるに連れてしみじみと判るようになりました。

読み残している作品が沢山ありますので徐々に読めたらいいなと思っています。


投稿: おキヨ | 2010年9月20日 (月) 12時43分

風花爺さん様

実は私も同郷の作家と云う割には読んだ作品が少ないのです。随筆や短編が多く手元にも〔わくらば〕〔ふなうた〕などしか残っていません。
〔忍ぶ川〕が発表されたときにはちょっとした社会現象になり、故郷ではたいへんな誇りでした。
私は映画は観ませんでしたが映画もよかったと聞いています。
〔忍ぶ川〕は読んでからあまりに月日が経ちすぎてしまい、よく覚えていないのでもう一度読んでみたいと思っています。
若い頃は筋だけを追っていたと思うので、今読めばまた作品に対する感じ方も違うと思うのです。

しかし、本好きの人が誰しも思うのは、あらゆる書物を読んでから死にたい、というのが本音で、それは到底かなわぬことですねhappy01

投稿: おキヨ | 2010年9月20日 (月) 13時00分

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