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〔白夜を旅する人々〕を読み終えて

三浦哲郎の長編小説〔白夜を旅する人々〕を読み終えました。物語は作者が誕生した昭和6年、まだ実家の呉服屋が盛況であった時代から6人の兄妹が成長するに従がい、徐々に家系の〔血〕に悩み、それぞれが自殺や出奔で一族が滅びていく様をきめ細かく清冽な文章で書き進めています。

作家自身の家系やその衰退を小説に書くということに当り、作者は母親に〔自分が生きている間は書いてくれるな〕と言われたということです。東北の小さな田舎町という枠内で、遺伝的要素の強い特殊な子供が2人も居る家族は、周囲からどのような辛酸を味わされるか、物語の時代背景より数十年も後に生まれた私でも容易に想像ができます。東北の人間は素朴で真正直というイメージをもたれますが、素朴で真正直ということはそれゆえに残酷な部分があるのです。自分たちと少しでも違う他人には理解を示さない。直に嫌悪し排他しようとする。私の若かった50年前にも、まだ東北という地方はそれが如実でした。

ですから、世間に受け入れられない子供が居る家族はどれほど残酷な状態に置かれたかが、文学的要素の高い文体で淡々と書かれていてたとしても東北生まれの私はとてもよく解るのです。。。。その頃の私は〔都会では人間は隣に住むものに無関心〕ということが羨ましかったのですから。。。

と言うようなことを考えさせられた小説でいした。

P1120530

ザクロ 0号 

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コメント

この本は読んでいませんが、三浦氏の「忍ぶ川」を思い出します。あの中でもたしか兄や姉が出奔したり自殺したりと、呪われた家系・家族という設定だったと思います。
昔はそうした家系に対して、無理解というか偏見というか、おぞましい仕打ちをする人が多かったのでしょう。それは、社会が全体に貧しかったからだと思います。心も貧困にならざるを得なかったのでしょう。その頃の東北地方は、飢餓に見舞われたと聞いています。
三浦氏はつい先日、他界しましたね。大学・学部・学科全てで私の大先輩に当たります。ご冥福をお祈りします。

投稿: 矢嶋武弘 | 2010年10月20日 (水) 06時56分

矢嶋様
三浦哲郎といえばなんといっても出世作〔忍ぶ川〕ですね。
叙情的で美しい描写が魅力でした。
〔白夜を旅する人々〕は主人公は作家の兄妹で、自身はまだ幼い子供です。凄烈な内容にかかわらず、淡々とした筆運びは作家の天分なのでしょう。

昭和初期の東北地方はまだまだ閉鎖的な状態だったと思います。常にひっそりと周囲に同化した行動や生活状態でないと生きていくのに支障があったことでしょう。。

家が滅び、幼年の作家が次兄、次姉と共に馬車で父親の故郷の更なる田舎に経つ描写はロシア文学を読むような想いでした。

投稿: おキヨ | 2010年10月20日 (水) 11時10分

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